研究紹介

 

 3次元空間や、その内部にある曲面・結び目・空間グラフなどの図形について、トポロジーの手法を用いて対称性の研究しています。空間グラフは結び目に似ていますが、枝分かれをしている部分があってもよい図形です。
 3次元空間といっても、全体に一つの3次元座標系が入っているものだけではなく、任意の点でその周囲だけを見れば3次元座標系を描けるという性質を持つものも考えています。このような空間は、3次元多様体と呼ばれています。例えば、地表面のような球面全体に一つの2次元座標系は入りませんが、任意の点に対してそれを含む半球をとり、平らにして考えると2次元座標を描けるので、この球面は2次元多様体です。
 トポロジーは、空間内にある近くの点を近くの点へうつす1対1の写像で不変な図形の性質を調べる学問です。このような写像は同相写像と呼ばれています。また、3次元多様体上の有限個の同相写像からなる集合は、写像の合成に関して閉じているときに有限群作用と呼ばれ、3次元多様体の対称性を表しています。3次元多様体の内部にある図形の対称性は、その図形を保つ有限群作用で表されます。
 3次元多様体の姿を見るのは難しいことが多いのですが、空間や曲面を切ったり貼ったりして変形すると、対称性などの幾何的性質を研究することができます。このような研究が行われている分野は3次元多様体論や結び目理論と呼ばれていますが、研究の過程ではデーン手術や3次元多様体の幾何構造などに関する手法を用いています。