知念 宏司 のホームページ
- 応用代数学研究室 -
数学はおもしろい. そして, おもしろいものは必ず役に立つ !
※ 数学に関心のある方 (特に高校生の方) は★印の文書もぜひお読み下さい.
主な研究テーマ
1. 誤り訂正符号 (Error-Correcting Codes) の数学的理論および関連する代数学
2. 解析的整数論 (Analytic Number Theory)
どんな学問か?
ディジタル化された情報を伝える場合, 電気的ノイズなどの影響により誤りが発生することがあります. 符号 (誤り訂正符号) とは, そのような誤りをできる限り訂正し, 情報を正しく伝えるための仕組みです. このように, 応用の現場で生まれ, 実際に利用されている理論ですが, 群論, 環論, 代数幾何学, 整数論, 組合わせ論など, 代数学諸分野の成果を取り込み, 数学的理論としても大変充実したものとなっています. また, 「おもしろいものは必ず役に立つ」ということを例証している点において, 基礎科学の特質を非常によく表している理論とも言えます.
近年関心を持っているのは「符号のゼータ関数」です. これは言わば符号理論 (応用分野) と整数論 (純粋数学) の境界に位置するテーマで, 大変おもしろいと思います. 今では符号とは必ずしも関連を持たない不変式にも拡張され, 新しい現象も見つかっています.
★誤り訂正の考え方
★誤り検出符号の実例
★誤り訂正符号の実例
解析数論は整数論という分野の一部で, 特に解析学 (主に微分積分学, 複素解析学) を用いて整数のいろいろな性質を解明しようという分野です. 離散的なもの (整数) の性質が,「つながったもの (連続, なめらか)」を扱うのが得意な解析学でわかる, という不思議さが魅力です.
★循環小数もおもしろい
本研究室では, 「数学理論としての符号理論」と解析的整数論, それらに関連する代数学を中心に研究, 教育を行なっています.
著 書
- 平松 豊一, 知念 宏司『有限数学入門 --- 有限上半平面とラマヌジャングラフ』, 牧野書店, 128 p. (2003).
「グラフ」とは, ネットワーク (通信, 物流, 電子回路など, いろいろあります) を数学的に取り扱うためのモデルとして考えられた概念です. そこでは, 効率 (無駄なケーブルや通路がないか) や堅牢性 (1 か所ぐらい不通になっても迂回路がちゃんと確保されているか) などが重要となります. 「ラマヌジャン・グラフ」は, ネットワークとしての性能がよいグラフとして 1990 年頃に提唱された新しい概念で, やはり線型代数学, 群論, 有限体論, 整数論などの数学が活躍します. 本書ではグラフの基礎的事項から始めて, グラフの「よさ」を測る方法, ラマヌジャン・グラフの定義と実例などを紹介しています.
査読つき論文 (2001年以降)
- Chinen, K. : A bound for the ratio of consecutive eigenvalues of the hyperbolic Laplacian for the modular groups, Forum Math. 13-5 (2001), 685-720.
- Chinen, K. and Hiramatsu, T. : Hyper-Kloosterman sums and their applications to the coding theory, Appl. Algebra Engrg. Comm. Comput. 12 (2001), 381-390.
- Chinen, K. and Murata, L. : On a distribution property of the residual order of a (mod p), Proc. Japan Acad. 79 Ser. A (2003), 28-32.
- Chinen, K. : On some properties of the Hyper-Kloosterman codes, Tokyo J. Math. 26-1 (2003), 55-65.
- Chinen, K. and Murata, L. : On a distribution property of the residual order of a (mod p), J. Number Theory 105-1 (2004), 60-81.
- Murata, L. and Chinen, K. : On a distribution property of the residual order of a (mod p) -- II, J. Number Theory 105-1 (2004), 82-100.
- Chinen, K. and Murata, L. : On a distribution property of the residual order of a (mod p) (2), Proc. Japan Acad. 80 Ser. A (2004), 182-186.
- Chinen, K. : Zeta functions for formal weight enumerators and the extremal property, Proc. Japan Acad. 81 Ser. A. (2005), 168 - 173.
- Chinen, K. and Murata, L. : On a distribution property of the residual order of a (mod p) -- III, J. Math. Soc. Japan 58-3 (2006), 693-720.
- Chinen, K. and Murata, L. : On a distribution property of the residual order of a (mod p) -- IV, in Number Theory: Tradition and Modernization, W. Zhang and Y. Tanigawa, eds., Developments in Math. 15, 11-22, Springer Verlag, 2006.
- Chinen, K. : An abundance of invariant polynomials satisfying the Riemann hypothesis, Discrete Math. 308 (2008), 6426 - 6440.
- Chinen, K. and Tamura, C. : On a distribution property of the residual order of a (mod p) with a quadratic residue condition, Tokyo J. Math. 35-2 (2012), 441-459.
- L. Murata and K. Chinen: On a distribution property of the residual order of a (mod pq), Annales Univ. Sci. Budapest., Sect. Comp. 41 (2013), 187-211.
- Chinen, K. : Extremal invariant polynomials not satisfying the Riemann hypothesis, Appl. Algebra Engrg. Comm. Comput. 30-4 (2019), 275-284.
- Chinen, K. : Divisible formal weight enumerators and extremal polynomials not satisfying the Riemann hypothesis, Discrete Math. 342 (2019), Article 111601.
- Chinen, K. : On some families of certain divisible polynomials and their zeta functions,Tokyo J. Math. 43 (2020), 1-23.
- Chinen, K. : On some families of invariant polynomials divisible by three and their zeta functions, Math. J. Okayama Univ. 63 (2021), 175-182.
- Chinen, K. and Imamura, Y. : On the Riemann hypothesis for self-dual weight enumerators of genera three and four, SUT J. Math.57-1 (2021), 55-75.
雑誌への寄稿
- 平松豊一, 知念 宏司: 線形符号のゼータ関数とそのリーマン予想, 特集「符号化理論の新時代」, 数理科学 No. 497 (2004 年 11 月), 42-47.
- 「エレガントな解答を求む」出題. 数学セミナー, 出題篇: No.566 (2008 年 11 月), 8; 解答篇: No.569 (2009 年 2 月), 98-101; errata: No.571 (2009 年 4 月), 97.
- 同 上, 出題篇: No.584 (2010 年 5 月), 6; 解答篇: No.587 (2010 年 8 月), 100-103.
- 同 上, 出題篇: No.600 (2011 年 10 月), 7; 解答篇: No.603 (2012 年 1 月), 94-96.
- 「なぜ? なぜ? どうして?」回答寄稿, 「子供の科学」No.81-1 (2018 年 1 月), 58.
- 知念 宏司: イデアルの秘密に迫る, 特集「すごい定義」, 数学セミナー, No.685 (2018 年 11 月), 20-24.
- 知念 宏司: ラマヌジャン・グラフへの招待, 特集「ラマヌジャン」, 数理科学 No. 686 (2020 年 8 月), 60-65.
学会, 社会における活動
- 日本数学会, 日本物理学会 共催 市民講演会 講師. 「誤り訂正符号の話 -情報理論60周年-」, 2008.3.22, 近畿大学
(講演記録は「数学通信」 (発行: 日本数学会) 第 13 巻 2 号, 5 - 18. 日本数学会 市民講演会のページで見ることができます).
- 賢明女子学院 第 33 回数学公開講座 講師. 「ディジタル機器の数学 -誤り訂正符号の話-」, 2008.5.31, 賢明女子学院中高等学校 (兵庫県姫路市).
- 大阪府立泉北高等学校 スーパーサイエンスハイスクール 大学訪問研修担当, 2014.7.14, 2017.7.12.
その他
- 研究集会 「解析的整数論とその周辺 - 近似と漸近的手法を通して見た数論 -」 (京都大学数理解析研究所, 2012.10.29 -- 10.31) 研究代表者. ホームページはこちら (当時のプログラム, アブストラクトを置いてあります).
エルデッシュ数 3.
所属学会 日本数学会.
略歴, その他は
こちら
★印文書 一覧 大体, 高校数学ぐらいで読めるように, と思っています.
★誤り訂正の考え方
★誤り検出符号の実例
★誤り訂正符号の実例
★ショパンのプレリュードから群論へ
★循環小数もおもしろい
2007.4 公開, 2023.2 改訂